光りを放つ魚が、金色銀色の泡を湧かしながら、右往左往にヒラヒラと泳ぎまわり、中には不思議そうに眼玉を動かしながら、美留藻の顔を覗《のぞ》きに来たり、または仲よさそうに身体《からだ》をすり付けて行くのもあります。
その中《うち》に湖の底と見えて、沢山の宝石が一面に敷き並んで、色々の清らかな光りを放っている処へ来ました。
何しろ美留藻は生れて初めて、こんな不思議な美しい処へ来たのですから、感心のあまり暫くは夢のように、恍惚《うっとり》と見とれていましたが、又鏡の事を思い出しまして、斯様《かよう》な美しい処に隠して在る鏡というものは、どんな美しい不思議な宝物であろう。早く見付けたいものだ、と思いながら、又もや長い深い藻を掻き分け、魚を追い散らして、宝石の上を進んで行きますと、間もなく向うの一際美しい藻の林の間に、チラリと人間の影が見えました。扨《さて》は香潮さんが最早来ているのかと思いまして、急いでその方へ足を向けますと、向うでも気が付いたと見えて、この方《ほう》へ急いで来る様子です。その中《うち》にだんだん近寄って参りますと、香潮と思ったのは間違いで、彼《か》の夢の中で見た美留女姫に寸
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