様はこの世の果までも、御位《みくらい》に御出で遊ばす事が出来るで御座いましょう」
「何だ、その濃紅姫を妃にすると、この国はいつも静かに治まるというのか。イヤ、そんな静かな温柔《おとな》しい娘では、話し相手にしても嘸《さぞ》面白くない退屈な事であろう。俺達はそんな女は嫌いだ。それにこの国がいつまでも静かでは詰らぬ。何でも何か大騒動《おおさわぎ》が起って、珍らしい事や危ない事や不思議な事が、引っ切りなしに始まらなくては駄目だ」
とお爺さんは頭からはね付けてしまった。
これを聞くと赤鸚鵡は、さも困ったらしく首を傾《かし》げて黙り込んでしまった。そうして暫《しばら》くの間何か考えている様子だから、四人の者は待ち遠しくなって――
「これ赤鸚鵡。それではあとの二人の娘はどんな女だ」
「早く聞かせておくれな」
「どこに居《お》るの」
「何を為《し》ているのか」
と口を揃えて尋ねた。
赤鸚鵡はこう急《せ》き立てられると仕方なしに答えた――
「はい。それでは申し上げますが、あとの二人は二人共、この世に又とない賢い美しい娘で、一人は紅木大臣の末娘|美紅《みべに》と申し、今一人は南の国に在る多留美と
前へ
次へ
全222ページ中75ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング