神の舌から生れた俺こそ、真っ先に美味《うま》いものを頂戴せねば相成らぬ」
と云い張った。四人はこうして暫《しばら》く睨《にら》み合いの姿で黙っていたが、赤鸚鵡はこの様子を見て奇妙な声を出して、ケラケラと笑いながら云った――
「耳の王。眼の王。鼻の王。舌の王。よく御聞きなされよ。よく御味《おあじわ》いなされよ。どなたが先という事はない。どなたが後という事もない。
皆様|一同《いっしょ》にアッと御驚《おんおどろ》き遊ばすものを近い内に御覧に入れます。
貴方がたはこの世界の初め、石神の身体《からだ》から出た三つの宝物、白銀《しろがね》の鏡と宝石の蛇と私の役目をお忘れになりましたか。
私は生れ付いて知っている魔法で以《もっ》て、世界中の事を見たり聞いたりしまして王様方にお話し申すのが役目で御座います。又兄弟の白銀の鏡は、そんな面白い有様を王様に御目にかけるのが役目で、それから宝蛇奴《たからへびめ》は、そんな面白い出来事の初まるようにするのが役目で御座います。
今白銀の鏡と宝蛇は、南の国の多留美《たるみ》という湖の底に沈んでおりますが、その中で宝蛇は、貴方方四人が一人の藍丸国王となって
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