い、話したい、嗅ぎたい放題だ。ところでこれからどうすれば、この国に大騒動を起させて、珍しい事や面白い事に出会《でっくわ》す事が出来るか。赤鸚鵡よ、考えてくれ。お前は今の事ばかりでなく、行く末の事までも少しも間違わずに考える事が出来るのだから。先ず俺は石神の耳から現われたのだから、何でもかんでも聞くのが役目だ。何卒《どうか》面白い話を沢山聞かせてくれい」
と云った。するとその横に座っていた青い瘠せ女は直ぐにその言葉を打ち消した――
「イヤ。妾《わたし》は石神の眼から生れたもので、何でもかでも見るのが役目です。何卒《どうぞ》早く面白いものが見たい。赤鸚鵡よ、早く面白い珍らしいものを見せておくれ」
瘠せ女がこう云い切ってしまわぬうちに、今度は向側《むかいがわ》に居た、赤膨れの赤ん坊《ぼ》が甲走った声で――
「否《いや》だ。否《いや》だ。イケナイイケナイ。私から先だ私から先だ。私は美《い》い香気《におい》が嗅《か》ぎたい。花だの香木だのの芳香《におい》が嗅ぎたい。早く早く」
と叫んだ。すると直ぐ横に居たクリクリ坊主も負けていず、頓狂《とんきょう》な声で――
「ドッコイ待った。俺が先だ。石
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