一通りでありませんでした。直ぐに大勢で紅矢の寝床へ担《かつ》ぎ込《こ》みましたが、生憎な時は仕方のないもので、この家《うち》のお抱えの医者は、二三日前から遠方の山奥へ薬になる艸《くさ》や石を採りに行った留守で、とても一月や二月で帰って来る気遣いはなく、今の間《ま》には勿論《もちろん》合いませんでしたから、仕方なしに宮中のお抱えの青眼先生の処へ使いを立てて、大急ぎで御出《おい》で下さるようにと頼みました。丁度青眼先生は藍丸王のお叱りをうけて家に引き籠もっているところでしたが、紅矢が怪我をしたと聞くと直ぐに承知をしまして、薬を取り揃えて出かけました。
 青眼先生が来る迄に、美留藻の似せ紅矢は鋭く眼を配って、家《うち》の中の様子を見ますと、案の定この家の中に居る人々は、この間自分が夢の中で見た、美留楼《みるろう》公爵の家の人々にそっくりで、声までも少しも違いませぬ。美留藻は吾《わ》れながら眼の前の不思議に、今更に驚いてしまいましたが、又気を取り直しまして、それではこの家の末娘の美紅というのが、いよいよ自分と同じ夢を見て、吾れと吾が身を疑っているのに違いない。そうしてその姉の濃紅姫は、自分と一
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