皆|正午《ひる》までに最上等の分を調えておくように申し付けまして、今度は王城の西の方に向って馬を飛ばせました。どこへ行くのかと思うと、やがて美留藻は紅矢の家を尋ね当てまして、大胆にも表門から駈け込みましたが、馬から降りると直ぐに玄関に駈け寄って、その石段の上に伏し倒れて、悲し気な声で家《うち》の者を呼びました。
 家《うち》の者は、紅矢が昨日《きのう》旅から帰ると、直ぐに王宮へ行って、又王宮を飛び出して、「瞬」に騎《の》って王宮の周囲《まわり》を七遍も駈けまわって、そのまま昨夜《ゆうべ》の内に行衛《ゆくえ》が知れずになったという噂を聞きまして、薩張《さっぱ》り理由《わけ》が解らず、もしや王様から大層な急用でも仰せ付かったのではあるまいか。それとも帰り途に散歩に行って、大怪我でもしたのではあるまいかと、大層気を揉んでいるところでしたが、この声を聞くや否や皆一時に、素破《すわ》こそと胸を轟かして玄関に駈け付けて見ますと、こは如何《いか》に。
 紅矢は余程の大怪我をしたものと見えて、顔中繃帯をして、呼吸《いき》を機《はず》ませて倒おれております。この体《てい》を見た両親や、その他の者の驚きは
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