になって、嘘の掟を作って、こんな重宝なものを遠ざけて終《しま》いに俺を何にも知らぬ馬鹿者にしようとしたのだ。最早《もはや》俺は貴様の云う事を聞かぬ。俺はこの鸚鵡から、世界中の事を聞かせてもらった。又この鏡から、世界中の事を見せてもらった。御蔭で大層利口になった。こんな嬉しい事はない。こんな有り難い事はない。今まで俺に何事も知らせまい知らせまいとしていた貴様は、大不忠者だぞ。これ兵隊共、此奴《こいつ》を王宮の外に抓《つま》み出せ。以後俺が許す迄は王宮に来る事は相成らぬぞ」
 と云いながら扉をドシンと閉めました。
 青眼は忽ちむっくと起き上って、今閉まったばかりの扉に取り付いて男泣きに泣き出しました。
 青眼は藍丸王のこのように荒々しい、狂気《きちがい》じみた姿を見たのはこれが初めてでした。又このように無慈悲な言葉で、嘲けられ罵《のの》しられた事も初めてでした。あまりの事に扉に取り付いて、流るる涙を拭《ぬぐ》いもあえず――
「王様。王様。王様は気でもお狂い遊ばしましたか。この間まであのように優しく、あのように気高くておいで遊ばした王様が、どうしてそのようなお情ない浅ましい御心にお変り遊ばし
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