どういう訳でそのような妙な事を云ったり為《し》たりするのだ。少しも訳がわからぬではないか。なぜそのように隠すのだ。なぜそのように恐れるのだ。さあ、云え。さあ、返事をしろ。すっかり白状してしまえ」
王はこう云いながら一層鋭く青眼を見つめました。けれども青眼は矢張《やっぱ》りその眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》ったまま返事をしませぬ。じっとその顔を見ていた王は、やがて莞爾《にっこり》と笑って申しました――
「ハハア、解かった。貴様が隠す訳がわかった。恐れる訳がわかった。隠す筈だ。云えない筈だ。その掟は矢張り嘘の掟だからだ。貴様の先祖から代々貴様までも、根も葉もない作り事をして、俺にこのような貴い有り難い宝物《ほうもつ》を近づけぬようにして、自分だけ世界一の利口者になろうとしているのだ」
「いえ、決してそんな事は御座いませぬ。悪魔はどうしても悪魔で御座います。何卒《どうぞ》何卒王様、私の申す事を……」
と青眼は慌てて口を利きました。
「黙れ。青眼。貴様はどうしても俺を欺そうとする。貴様こそ悪魔だぞ。イヤ悪魔だ。悪魔に違いない。貴様の家は先祖代々云い伝えて、俺のお守役
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