が悪魔なのだ。なぜこの鏡と鸚鵡が悪魔の片われなのだ。貴様は今まで何一ツとして俺に隠した事はないではないか。云え。云え。その三ツの掟の出来た訳を云え」
と王は如何にも言葉鋭く詰め寄りました。けれども青眼先生は王の勢《いきおい》が烈しくなればなる程縮み上って、ふるえ方が烈しくなって、今は立っている事が出来ず、床の上にペタリと座り込んでしまいました。王はじっとその有様を見ておりましたが、なおも厳《おご》そかな口調で責めました――
「青眼。これ、青眼。貴様はなぜそのように恐れるのだ。なぜそのように顫《ふる》えるのだ。なぜその仔細《わけ》を俺に隠すのだ。一体貴様の為《す》る事は俺にはちっとも訳が解からぬぞ。この間のように見もせぬ夢を見たろう等と尋ねたり、又はこのような重宝なものを俺から奪い取って、罪も無い鸚鵡を殺そうとしたり、又は大勢の者が生命《いのち》を棄てて拾い上げてくれたこの貴い鏡を打ち壊そうとする。俺にとってはこれ位有り難い貴い重宝な宝物《ほうもつ》は無いのだぞ。それをなぜ貴様はそのように悪《にく》むのだ。そうしてその仔細を云えと云えばそのように青くなって顫《ふる》え上ってしまう。一体
前へ
次へ
全222ページ中110ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング