度のことがうまく行けばタンマリ貰えるぞ」
「ええ。僕は勲章が欲しいんですけど……」
「ハハ。今に貰ってやらあ……オット……モウ十分間過ぎちゃったぞ。それじゃもう一回注射して来るからな……録音器は大丈夫だろうな」
「ええ。一パイの十キロにしておきました。心配なのは鞄の内側の遮音装置だけです」
「ウム。毛布でも引っかけておけ。モトの通りに荷物を積んどけよ」
「聞いちゃいけないんですか。人間レコードの内容を……」
「ウン。仕方がない。こっちへ来い」
「モウ小郡《おごおり》に着きますよ」
「構うものか。五分間停車ぐらい‥‥」
二人はそのまま以前の特別貸切室に這入った。内側からガッチリと掛金をかけると、青年ボーイがポケットから注射器を出して、無色透明の液を一筒、寝台の上の老人の腕に消毒も何もしないまま注射した。
老人はモウ全くの死人同様になっていた。全身がグタグタになって、半分開いた瞼の中から覗いている青い瞳が硝子《ガラス》のように光り、ゲッソリと凹《へこ》んだ両頬の間にポカンと開いた唇と、そこから剥き出された義歯《いれば》がカラカラにカラビ付いて、さながらに木乃伊《ミイラ》の出来たてのよう
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