もそう云って下さい。二人は同罪だから罪ほろぼしをしろと云って下さい。……云々というのが戸若運転手の告白であった。
 流石《さすが》に事に慣れた川崎署員たちも、こうした告白は珍らしかったらしい。戸若運転手が告白を終って頸垂《うなだ》れてしまってからも、四人の警官が互いに顔を見合わせてシインとしていた。しかしその中《うち》に巡査部長が、何かしら憂鬱そうな眼を据《す》えながら戸若の繃帯頭を凝視した。
「ウムよく白状した。お前の後悔は認めてやるぞ」
 戸若は又一つ頭を下げた。シクシクとシャクリ上げ初めた。
「私が悪う御座いました」
 最前から手持無沙汰でいた交通巡査がロイド眼鏡をかけ直した。帳面をヒネリながら問うた。
「ウム。それはそれでいいとして、衝突の原因はお前がライトを消さなかったせいじゃない。蟹口が故意に衝突さしたと云うんだな」
「ヘイ。そうなんで……思い出してもゾッとします」
「フーム。しかし、そいつは何ともわからんな。イクラ怨みが在るにしても、そんな無茶をやるのは……」
「イイエ……」
 戸若は昂奮して立上った。自分の告白の神聖さを侮辱されたように眼の色を変えて、口を尖《と》んがら
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