に鬼のような形相に変った蟹口運転手が、思い切りハンドルを右に廻している姿がチラリと見えたと思う間もなく、轟然《ごうぜん》と衝突してしまった。こちらのトラックの方が新しくて頑固だったので、相手のヤワな車を引っかけて引ずり倒したまま二十|米突《メートル》ほど前進して停車したが、停車すると同時に相手のトラックのデッキに並んだ牛乳が大波のように舞い上って、そこいら中に滝のように降り注いだ事だけを夢のように記憶している。
今朝《けさ》になって正気付いて、病院から警察へ連れて来られて、表のタタキに茣蓙《ござ》を被《かぶ》せたまま置いてある、あの蟹口運転手のメチャメチャになった妖怪じみた死骸を見た瞬間に……壊れた額から飛出《とびだ》した二つの眼球《めだま》が私を白眼《にら》んでいるのに気付いた時に私はモウ一度気が遠くなりかけました。
蟹口運転手は私という事に気付いていたに違いありません。私と刺違《さしちが》えるつもりで、あんな事をしたに違いないと思います。
私は何もかも白状します。どんな罪でも受けます。そうして蟹口さんの怨みを晴らしてもらわなければトテも恐ろしくてたまりません。
妻のツル子に
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