少女のように赤らみ膨らんでいた。
緞子の椅子の肱《ひじ》に白い、ふくよかな両腕を投げかけて、そういう青年の顔を真正面から見上げていた眉香子は、非常に感動したらしく真青になっていた。何度も何度もうなずきながら、大きく眼をしばたたいているうちに、大粒の涙を惜気もなくホロリホロリと両頬に落しかけていたが、説明を終った青年がヒョッコリと頭を下げると一緒に、深く頭を下げて両手を顔に当てた。咽《むせ》ぶようにいった。
「わたしの僅かばかりの爆薬が、それほどのお役に立ちますとは……何という……」
といううちに応接台の片隅に載っていた旧式の電話器へ手を伸ばして、ベルを廻転させ始めた。涙に濡れた左右の頬に、なおも新しい感激の涙を流しかけながら……。
……リンリン、リリリン……リンリン、リリリン……リンリン、リリリリリリリリ……
そんな風に繰り返して断続するベルの音《ね》を、青年は何となく緊張した態度で見守っていた。そのベルの継続のし方が、ちょうど鉄道か警察の呼出信号に似ていたからであったろう。
間もなく返事が来た。
……リンリン、リンリンリンリンリンリンリン……
眉香子はその音の切れるのを
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