女坑主
夢野久作

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)仰言《おっしゃ》る

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)新張|眉香子《みかこ》は

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)見よ※[#感嘆符二つ、1−8−75]
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「ホホホ。つまりエチオピアへお出でになりたいからダイナマイトをくれって仰言《おっしゃ》るんですね。お易《やす》い御用ですわ。ホホホ」
 新張《にいばり》炭坑の女坑主、新張|眉香子《みかこ》は、軽く朗らかに笑った。
 初期の銀幕スターから一躍、筑豊の炭坑王と呼ばれた新張|琢磨《たくま》の第二号に出世し、間もなく一号を見倒して本妻に直ると、今度は主人琢磨の急死に遭い、そのまま前科者二千余人の元締ともいうべき炭坑王の荒稼ぎを引き継いで、ガッタリとも言わせずにいるというしたたか者の新張眉香子は、さすがに顔色一つかえないまま、こうした無鉄砲な要求を即座に引き受けたのであった。
 四十とはトテモ見えない襟化粧、引眉、口紅、パッチリと女だて
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