Cの読み方だの、キッスの送り方だの……誕生石の話だの……花言葉だの……だけど、その中でも一等面白くて怖かったのは、やっぱり、そのステキな恋愛のお話だったわ。妾ホントに感心しちゃったのよ。ヤングが何でもよく知っているのに……。
それは亜米利加のお金持ち仲間で流行《はや》る男と女の遊び方で、お金持ちになればなる程、そんな遊びの方法《しかた》が乱暴なんですってさあ。……ええ……それはトテモ贅沢な室《へや》の仕掛けや、高価《たか》いお薬や、お金のかかる器械や、お化粧の道具なぞが、いくらでも要《い》るので、貧乏人にはトテモ出来ない遊びなんですってさあ。そうして亜米利加の若い男や女は、そんな遊びがしたいばっかりに、一生懸命になって働らいて、お金を貯《た》めているんですってさあ。
その遊び方法《かた》っていったら、それあ沢山あるわよ。みんなお話しするのは大変だけど、一寸《ちょっと》云って見ればね……紅《べに》で作ったチューインガムや薬みたようなものを使って、相手を血まみれの姿にし合いながらダンスをしたり……天井も、床も、壁も、窓掛けも、何もかも緋色《ひいろ》ずくめにした部屋の中に大きな蝋燭《ろう
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