みたいに喰い込んで、そこいら中の肉が切れて落ちそうになるんですもの……それでいて、いくら喘《あえ》いでも喘いでも喘ぎ切れない位息が切れているんですもの……妾はそのまま直ぐに気が遠くなっちゃった位なの。だけども又すぐに苦しまぎれに息を吹きかえすと、又もや火の付いたように針金が喰い込むでしょう。地獄の責め苦ってほんとうにあの事よ。そうして息も絶え絶えにヒイヒイ云っているうちに今度は本当に気絶してしまったらしいの。
それから何分経ったか、何時間経ったのかわからないけど、又自然と息を吹き返した時には、妾はもう半分死んだようになっていたようよ。手や足の痛さがわからなくなってしまってね。……そうして眼だけを大きく見開いてどこかを凝視《みつ》めていたようよ。だからその時に聞いた話も、夢みたように切れ切れにしか記憶《おぼ》えていないの。
「……どうでえ。綺麗な足じゃねえか」
「ウーム。黒人《ニガ》の野郎、こいつをせしめようなんて職過《しょくす》ぎらあ」
「面《つら》が歪《ゆが》んだくれえ安いもんだ。ハハン」
「しかし、よっぽど手酷《てひど》く暴れたんだな。あの好色《すけべえ》野郎が、こんなにまで手
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