せったらヂック……そんな事をしたら化けて出るぞ」
「ハハハハ……化けて出たら抱いて寝てやらあ……何も話の種だ……エヘンエヘン」
「止せったら止せ……馬鹿だなあ貴様は……云ったってわかるもんか」
「まあいいから見てろって事よ……これあ余興だかンナ……俺の云う事が通じるか通じないか……」
って云ううちに、そのヂックって男は、又一つ咳払いをしながらハッキリした露西亜《ロシア》語で演説みたいに喋舌《しゃべ》り出したの。
「エヘン……袋の中の別嬪《べっぴん》さんたち。よく耳の垢《あか》をほじくって聞いておくんなハイよ。いいかね。……お前さん達はみんな情人《いいひと》と一緒になりたさに、こんな姿に化けてここへ担《かつ》ぎ込まれて来たんだろう。又……お前さん達の情人《いいひと》も、おんなじ料簡で、お前さん達をここまで連れて来たんで、決して悪気じゃなかったんだろうが、残念な事には、それが出来なくなっちゃったんだ。いいかい……だからね。……エヘン……だから怨むならばだ……いいかい……怨むならば、お前さん達の情人《いいひと》にこんなステキな智恵を授けた、ヤングという豪《えら》い人を怨まなくちゃいけないん
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