、あんたと同じ位に若く見えたわ。六尺位の背丈けの巨男《おおおとこ》でね。まじめな、澄まアした顔をしていたわ。あの軍艦《ふね》の中でも一等のお金持ちで、一番の学者だって、取り巻きの士官や水兵さん達がそう云っていたから本当でしょうよ。もっとも学者だっていうけど、あんたと違って歌も知っているし、音楽も出来るし、お酒はいくら飲んでも平気だし、ダンスでも賭博《ばくち》でも、あんたよりズット巧かったわ……それからもう一つ……お話がトテモ上手だったの。イイエ。そんな六箇敷《むずかし》い話じゃないの。それあステキに面白い……トテモ恐ろしい恋愛の話よ。ヤングはその方の学者だって、自分でそう云っていた位だわ。
……ええ……そのヤングは軍艦が浦塩《うらじお》に着くと間もなく、このオブラーコの舞踏場へ遣《や》って来て、一番最初に妾を捉《つか》まえて踊り出したの。そうしたら妾の身体《からだ》が、ヤングの半分位しかなかったもんだから、一緒に来た士官や水兵さん達が、みんなでワイワイ冷やかして、ピューピュー口笛を吹いたりしたの。……そうしたらヤングも一緒になって笑いながら、妾をお人形さんのように抱き上げて、この室《
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