うしてモット大きな袋に入れてもらわなくちゃ……と、そればっかり考えていたわ。そうして人にわからないように少しずつ寝がえりをしかけていると、不意に頭の上で誰かが口を利き出したので、妾は又ハッとして亀の子のように小さくなってしまったの……それは何でも三四人の男の声で、妾のすぐ傍に突立《つった》って、先刻《さっき》から何か話していたらしいの……。
「まだルスキー島はまわらねえかな」
「ナニもう外海《そとうみ》よ」
「……ワン。ツー。スリー。フォーア……サアテン。フォテン……おやア……一つ足りねえぞこりゃア……フォテン。フィフテン。シックステン……と……あっ。足下《あしもと》に在《あ》りやがった。締めて十七か……ヤレヤレ……」
「……様《さま》と一緒なら天国までも……って連中ばかりだ」
「惜しいもんだなあ……ホントニ……おやじせえウンと云えあ、布哇《ハワイ》へ着くまで散々《さんざっ》ぱら蹴たおせるのになア」
「馬鹿野郎。布哇《ハワイ》クンダリまで持って行けるか。万一見つかって世界中の新聞に出たらどうする」
「ナアニ。頭を切らして候補生の風《ふう》をさせとけあ大丈夫だって、ヤングがそう云ってたじ
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