さき》に身を投げかけるようにして来た相手は、そのまま懐剣を取落して仰《の》けぞった。両手の指をシッカリと組み合わせたまま、あおのけに倒おれると、膝頭をジリジリと引き縮めた。涙の浮かんだ眼で平馬を見上げながらニッコリと笑った。
「……本望……本望で……御座います。平馬様……」
 そう云ううちに、袈裟《けさ》がけに斬り放された生平《きびら》の襟元がパラリと開いた。赤い雲から覗いた満月のような乳房が、ブルブルとおののきながら現われた。
「……すみませぬ……済みま……せぬ……。今までのことは、何もかも……何もかも……偽り……まことは妾《わたくし》は……女……女役者……」
 と云いさして平馬の方向《ほう》へガックリと顔を傾けた……が……しかし、それは苦痛のためらしかった。そのまま眼を閉じてタップリと血を吐いた。……と見るうちに下唇を深く噛んで、白い小さな腮《あご》を、ヒクリヒクリとシャクリ上げはじめた。
 平馬は血刀を掲《ひっさ》げたまま茫然となっていた。
「……ええ。お頼み申します。お取次のお方はおいでになりませぬか。手前は見付の佐五郎と申す者で御座います。どなたかおいでになりませぬか。お頼み
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