を依頼|仕候《つかまつりそうろう》。そのため貴殿にも何事も洩らさず同婦人に自由行動を執《と》らせ候段、何卒《なにとぞ》不悪《あしからず》御諒恕《ごりょうじょ》賜《たま》わりたく、貴殿の御骨折に対しては警察当局も感謝|致居候《いたしおりそうろう》。御ゆっくりと御休息の上、明日より御出社|相願度《あいねがいたく》委細はその節を期し申候《もうしそうろう》。
 封入の金子《きんす》、貴殿俸給の内渡《うちわたし》に有之《これあり》候間《そうろうあいだ》御査収|願上候《ねがいあげそうろう》
[#ここで字下げ終わり]
                 匆々[#地より4字上げ]
  つ も り印[#「印」は○付き文字]」[#地より2字上げ]
 封入の札を数えてみると十円で七枚あった。吾輩は舌なめずりをした。それから顔をツルリと撫でまわして又一つ舌なめずりをした。津守編輯長のためなら火水《ひみず》にでも飛込む気で、靴下を穿いた。
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   両切煙草の謎


 ちはやふる[#「ちはやふる」に傍点]山羊髯の、津守編輯長ばっかりはドウ考えても奇妙な人間だ。内容、外観共に、古今|稀《まれ》に見る麻迦
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