山羊髯編輯長
夢野久作

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)汚穢《きたな》い

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)二階の窓|硝子《ガラス》が

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)山羊髯のおやじ[#「おやじ」に傍点]は
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[#本文中、新聞記事の見出しを模した箇所では、入力者注で文字の大きさを表した。大きさの比率は、見出し文字:小見出し文字:本文の文字=5:4:3]


   女 箱 師


       一

「玄洋日報社」と筆太に書いた、真黒けな松板の看板を発見した吾輩はガッカリしてしまった。コンナ汚穢《きたな》い新聞社に俺は這入《はい》るのかと思って……。
 古腐ったバラック式二階建に塗った青い安ペンキがボロボロに剥《は》げチョロケている。四つしかない二階の窓|硝子《ガラス》が新聞紙の膏薬《こうやく》だらけだ。右手に在る一間幅ぐらいの開《あ》けっ放しの入口が発送口だろう。紙屑だの縄切れだのが一パイに散らかっている。
 その前に掲示してある八|頁《ページ》の新聞を見ただけで吾輩は読む気がしなくなった。
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