え玉ちゃん。僕も実はスッカリ東京を喰い詰めちゃってね。はるばる九州クンダリまで河合又五郎をきめて来たんだ。そうしてタッタ今、玄洋新聞社に這入って、記事を取って来いって云われたもんだから、一気に飛び出して来たら君にぶつかっちゃったんだ」
「大変なものを自摸《ツモ》しちゃったのね」
「ウン、万一ヘマを遣ると君と一緒に新聞記事にされた上に、オマンマの種に喰付き損になるんだ」
「困るわね」
お玉は真剣に吾輩の事を心配しているらしく、両手をワンピースの膝の上で拝み合わした。実は、吾輩もここでこの女に宿賃なんか払わしちゃ江戸ッ子の名折れになる。どうかして編輯長に電話をかけて、せめてここの宿賃だけでも月給の前貸しをしてくれと頼みたい一心でコンナ話を持ち出したのであったが、そこは相手が女だけに、吾輩のそうした腹を察し得なかったらしい。何か思案しながらジッと閉じていた眼を、やがて嬉しそうに見開くと、両手をポンとたたき合わして椅子をスリ寄せて来た。
「――それじゃアンタ……いい事があるわ。明日《あした》ね。妾が、この麻雀《マージャン》の籠を持って大阪へ行ったら、ここの警察へ思い切り馬鹿にした投書をするか
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