て来た第二の炭車《トロッコ》が、先頭の炭車《トロッコ》に押戻されて、空《くう》を探る蚕《かいこ》のように頭を持上げたが、そのまま前後の炭車《トロッコ》と一緒にユラユラと空中に浮き上って、低い天井と、向う側の岩壁を突崩《つきくず》し突崩し福太郎に迫り近付いて来た。そうして中腰になったまま固くなっている福太郎の胸の上に、濡れた粉炭の堆積をドッサリと投掛けて、一堪《ひとたま》りもなく尻餅を突かせると、その眼の高さの空間を、歪み曲った四ツの炭車《トロッコ》が繋がり合ったまま、魔法の箱のようにフワリフワリと一週して、やがて不等辺三角形に折れ曲った一つの空間を作りつつ、福太郎の身体《からだ》を保護するかのように徐々《しずしず》と地面へ降りて来た。それに連れて半分|粉炭《こなずみ》に埋もれた福太郎の安全燈《ラムプ》が、ポツリポツリと青い光りを放ちつつ、消えもやらずに揺らめいたのであった。
けれどもその安全燈《ラムプ》の光りは、やがて又、赤い煤《すす》っぽい色に変るうちに、次第次第に真暗くなって消え失せてしまったかと思われた。それはこの時福太郎の頭の上から、夥しい石の粉が、黒い綿雪のようにダンダラ模
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