、ワイワイ騒ぎ立てたので、狭い坑道の中が芋を洗うようにゴッタ返したが、その中《うち》に、浮上った炭車《トロッコ》の車輪の下から、思いがけない安全燈《ラムプ》の光りと一緒に、古靴を穿いた福太郎の片足が発見されたのでイヨイヨ大騒ぎになったものだという。それからヤット駈付けた仕繰夫《しくり》の源次が先に立って硬炭《ボタ》や炭車《トロッコ》の代りに坑木の支柱を入れながら、総掛りで福太郎を掘出してみると、まだ息があるというのでそのまま、程近い福太郎の納屋に担ぎ込んで、ラムプを点《とも》して応急手当をしているうちに、幸運にも福太郎は頭の上に小さな裂傷《きず》を受けただけで、間もなく正気を回復した。そうして取巻いている人々の顔を吃驚《びっくり》した眼で見まわすと、ムックリと起上って、眼の前に坐っている仕繰夫《しくり》の源次に、
「ここはどこじゃろか」
と尋ねたのであった。
皆《みんな》はこれを見て思わず「ワーッ」と声を上げた。表口に折重なって、福太郎の容態《ようす》を心配していた連中も、その声を聞いてホーッと安心の溜息をしたのであったが、その中《うち》の二三人が早くもゲラゲラ笑い出しながら、
「
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