る私の素描」をここに更《あらた》めて御披露させて頂く事にした。

     再び「探偵小説の真使命」について

 ところで甚だ卑怯な前置であるが、この一文は私の狭い個性を通じて観た「探偵小説に対する信念もしくは偏見」で万人共通のものではないかも知れない。のみならずそれは現在の私の心境で、明日の私の心境ではないかも知れない。のみならず、それは必然的に私が文芸通信誌に書いた「探偵小説の真使命」と同じ内容もしくは、その註釈みたようなものになってしまうべき性質のものではないかとも思うが、しかし、それが万一にも本誌の愛読者諸君のために……特に甲賀三郎氏の「探偵小説講話」を愛読される諸賢のために――「こんな観点も別にあるのだな」とか又は「これは甲賀氏の所論に対する一種の註釈だな」とかいう意味で、一種の新しい参考となり、目下興隆の機運に向いつつある探偵小説界に投ずる一石ともなり得るならば、私にとって絶対の光栄であり欣快とするところである事を思うて、敢《あ》えてこの蕪文を続行する次第である事を何よりも先に諒恕《りょうじょ》して頂きたい。
 文芸通信誌上「探偵小説の真使命」の中で私はコンナ事を書いた。

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