。二人をかくまっておいて、時枝のおやじ[#「おやじ」に傍点]を脅喝《いたぶ》ろうという寸法だ。だからその時に佐賀署と連絡を取って、ネタを押えてフン縛ろうと思うておったのを、スッカリ打《ぶ》ち毀《こわ》されて弱っとるところだ」
「アハハハハ、大切《だいじ》の玉が死んだからナ」
「ソ……そうじゃない。君がこの記事を書いたからサ。実に乱暴だよ君は……」
「別に乱暴な事は一つも書いていないじゃないか。事実か事実でないかは、色んな話をきいているうちに直覚的にわかるからね。第一この写真が一切の事実を裏書きしているじゃないか」
「そうかも知れん……が、しかしこの記事は軽率だよ」
「怪《け》しからん。事実と違うところでもあるのか」
「……大ありだ……」
「エッ……」
「しかも今のところでは全然事実無根だ」
 私はドキンとして飛び上りそうになった。……早川に直接当らなかったのが手落ちだったかナ……と思うと、立っても居てもいられないような気持ちになった。大塚警部も困惑した顔になって、サアベルの頭をヤケに押し廻したが、やがて私の顔とスレスレに赤い顔を近付けると、酒臭いにおいをプーンとさした。
「実は僕も弱っ
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