空を飛ぶパラソル
夢野久作

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)空《くう》を飛ぶ

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)新聞|記事《だね》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「┐」の中に「サ」、屋号を示す記号、188−7]
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     その一 空《くう》を飛ぶパラソル

 水蒸気を一パイに含んだ梅雨《つゆ》晴れの空から、白い眩《まぶ》しい太陽が、パッと照り落ちて来る朝であった。
 ちょうど農繁期で、地方新聞の読者がズンズン減って行くばかりでなく、新聞|記事《だね》の夏枯れ季節《どき》に入りかけた時分なので、私のいる福岡時報は勿論のこと、その他の各社とも何かしら読者を惹き付ける大記事は無いか……洪水《おおみず》は出ないか……炭坑は爆発しないか……どこかに特別記事《とくだね》は転がっていないか……と鵜《う》の目|鷹《たか》の目になっていた。そんなようなタヨリナイ苛立たしい競争の圧迫を、編輯長と同じ程度に感じていた遊撃記者の私は、ツ
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