《ぱ》連の成れの果は皆、警官(邏卒《らそつ》、部長、警部等)に採用されていたものであったが、この羅卒(今の巡査)連中が皆鎮台兵と反《そ》りが合わなかった。……俺達のような腹からの士族と同じように、町人百姓が戦争の役に立つものか……といったような一種の階級意識から、犬と猿のように仲が悪く、毎日毎日福岡市内の到る処で、鎮台兵と衝突していたものであるが、しかも、そうした不平士族の連中の中には西郷隆盛の征韓論の成立を一日千秋の思いで仰望していたものが少くなかった。祖先伝来の一党を提《ひっさ》げて西郷さんのお伴をして、この不愉快な日本を離れて士族の王国を作りに行かねばならぬ。武士の生涯は武を以て一貫せねばならぬ。町人や百姓と伍して食物を漁《あさ》り合わねばならぬ、犬猫同然の国民平等の世界に、一日でも我慢が出来《でく》るか……とか何とか云って鼻の頭をコスリ上げている。
 そこへ征韓論が破れて、西郷さんが帰国したというのだから一大事である。

 その頃、筑前志士の先輩に、越智《おち》彦四郎、武部小四郎、今村百八郎、宮崎|車之助《くるまのすけ》、武井忍助なぞいう血気盛んな諸豪傑が居た。そんな連中と健児
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