何《なん》にせい珍らしいものば見た」
「仁三郎も途方もない嬶《かか》アば持ったのう」
「仁三郎はやっぱりよう考えとるバイ。達者な内にあげな嬶アばもろうて、あげな歌バッカリ毎日毎晩歌わにゃならんちうたなら俺でも考える」
「第一魚市場の魚が腐る」
「アハハハッ……人間でも腐る。俺は聞きよる内に腰から下の方が在るか無いか判らんごとなった、生命《いのち》にゃかえられんけに引っくり返ってやろうかと何遍思うたか知れん」
「俺は袴の下に枕を敷いとったが、あのオチニの風琴の音をば聞きよる内に、自分の首が段々細うなって、水飴《みずあめ》のごとダラアと前に落ちようとするけに、元の肩の上へ引き戻し引き戻ししよったらその中《うち》に済んだけに、思わずアーメンと云うたら、涎《よだれ》がダラダラと袴へ落ちた、まあだ変な気持がする」
「ああ非道《ひど》い目に遭うた。どこかで一杯飲み直そうじゃないや」
「ウアイー賛成! 賛成! 助かりや助かりや、有難や有難や、勿体なや、サンタ・マリア……一丁テレスコ天上界。八百屋の人参、牛蒡《ごぼう》え――」
「踊るな馬鹿!」
「アーメン、ソーメン、トコロテン。スッテンテレツク天狗《
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