のような浪また浪の中ですけに宜《よ》うがすなあ……四海浪《しかいなみ》、静かにてエー……という歌はここの事ばいと思いましたなあ。しかし何をいうにもあの通りのノッペラボー同志ですけに浪の上では、思う通りに夫婦の語らいが出来《でけ》まっせん。そこで最初《さいぜん》から尾《つ》いて来たマクラ魚が、直ぐに気を利かいて枕になってやる……」
「アハハハハ。馬鹿馬鹿しい」
「アハアハアハアハ。ああ苦しい。モウその話やめてエッ」
「イヤ。笑いごとじゃありません。鮫という魚《さかな》は俗に鮫肌と申しまして、鱗《うろこ》が辷《すべ》らんように出来ておりますけに、海の上の枕としては誠にお誂《あつら》え向きです。しかし何をいうにも何十|尋《ひろ》という巨大《おおき》な奴が、四方行止まりのない荒浪《あらうみ》の上で、アタリ憚からずに夫婦の語らいをするのですから、そこいら中は危なくて近寄れません。大抵の蒸気船や水雷艇ぐらいは跳ね散らかされてしまう。岸近くであったら大海嘯《おおつなみ》が起ります。その恐ろしさというものは、まったくの生命《いのち》がけで、月明りをタヨリに、神仏《かみほとけ》の御名《おんな》を唱えなが
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