らしく、二人ともアンマリ欠伸《あくび》を噛み殺して来たためにスッカリ涙ぐんでしまっていた。令兄の杉山茂丸氏の如きは、そのズッと以前から後悔の臍《ほぞ》を噛んでいたらしい。警告の意味で、故意と声を立てて大きな欠伸《あくび》を連発していたが、それでも白浪を蹴って進む林技師の雄弁丸が、どうしてもSOSの長短波に感じないので、とうとう精も気魄《きはく》も尽き果てたらしく、ゴリゴリと巨大なイビキを掻き始めた。それを笑うまいとしている芸者連が、必死にハンカチで口を押えている始末……。
しかし林技師の雄弁丸は物ともせずにグングンスチームを上げて行った。俄然《がぜん》として英領|加奈陀《カナダ》の缶詰業に火が移った。続いて露領沿海のタラバ蟹に延焼し、加察加《カムサッカ》の鮭、鰊《にしん》と宛然《さながら》に燎原《りょうげん》の火の如く、又は蘇国《ソヴェート》の空軍の如く、無辺際の青空に天翔《あまかけ》る形勢を示したが、その途端、何気なく差した湊屋の盃を受けて唇に当てたのが運の尽き、一瞬の中《うち》に全局面を、無学文盲の親友に泄《さら》われてしまった。
「フウム。これは感心した。日本中で鯨の事を本格に
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