はアンマリ長生きせん方が良《え》えと思いますなあ。人間一代山は見えとる。長生きしようなんて考えるだけで寿命が縮まるなあ。八代さん。美味《うま》い酒をば飲むだけ飲うで、若い女子《こども》は抱くだけ抱いて、それでも生きとれあ仕様がない。又、明日《あした》の魚は糶《せ》るだけの話たい……なあ武谷先生……」
八代閣下と武谷博士がグウとも云えないまま苦々しい顔になった。社交家の杉山茂丸氏が透《す》かさず話題を転じた。鍋の中でグツグツ煮えている鯨のスキ焼の一片を挟み上げて令弟、林駒生技師に提示した。
「オイ。駒生。この肉は鯨の全体でドコの肉に当るのかね」
サア事だ。林水産狂技師の得意の話題に触れたのだ。油紙に火が附いた以上の雄弁の大光焔がどうして燃上らずにおられよう。八代大将の松葉も、湊屋仁三郎の短命術も太陽の前の星の如くに光を失わずにはおられなかった。
「そもそも鯨というものは」……というので咳《がい》一咳。先ず明治二十年代の郡司大尉の露領沿海州荒しから始まって、肥後の五島列島から慶南、忠清、咸竟《かんきょう》南北道、図們江《ツーメンキャン》、沿海州、樺太《からふと》、千島、オホーツク海、白
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