業の水野が、白足袋などを穿《は》いて改まって来たので、何事か知らんと思って座敷に上げた。ちょうど時分がよかったので午餐《ごさん》まで出して一本|燗《つ》けた。
水野は遠慮なく厄介になりながら熱心に説去《ときさ》り説来《とききた》ったが、聞き終った青柳喜平氏は米搗杵《こめつききね》みたいな巨大な腕を胸の上に組んだ。
「ウムウム。成る程成る程。よう解かった。如何にも貴様の云う通り人間は老少|不定《ふじょう》。いつ死ぬるかわからん。俺の親父《おやじ》も中気で死んどる故《けに》、血統《すじ》を引いた俺も中気でポックリ死なんとは限らん。実はこの頃、肥り過ぎて子供相手に柔術《やわら》が取れんので困っとる。技術《わざ》に乗ってやれんでのう」
「ウン。それじゃけに今の中《うち》に保険に入れと……」
「まあ待て待て。それは良う解かっとる。這入らんとは云わん」
「有難い。流石《さすが》は青柳……」
「チョチョチョッと待て……周章《うろたえ》るな。そこでタッタ一つ解らん事がある」
「何が解らんかい。これ位わかり易い話はなかろう」
「さあ。それが解からんテヤ。つまりその俺がポックリ死んだなら、取れた保険の金
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