ソンナところは無暗《むやみ》に義理固い篠崎、水野の両保証人が、又木の本籍地へ乗込んだ。色々身よりを探しまわって又木の後を立てるべく苦心したが、その又木のアトがどうしてもわからない。そこで……これでは詰まらん博多へ帰ろう。又木の菩提追福のためにこの金《かね》を潔く女共へ呉れてしまおう……というので仕事の休み序《ついで》に柳町に押上り、あらん限りの太平楽を並べて瞬く間に残金を成仏させて帰った。そうして帰ると直ぐに二人で一パイ飲んだ。
「ああ清々した。しかし水野、保険というものはええものじゃねえ」
「ウン。こげな有難い物《もん》たあ知らんじゃった。感心した。又誰か保険に加入《はい》らんかな」
「おお。そういえばあの角屋の青柳喜平はまあだ三十四五にしかならんのに豚の様《ごと》ブクブク肥えとる。百四五十|斤《きん》位あるけに息が苦しいとこの間自分で云いよった。あの男なら四十位になると中風《ちゅうき》でコロッと死ぬかも知れんぜ」
「うむ。アイツの親爺《おやじ》も中気で死んどる。彼奴《あいつ》は保険向きに生れとる事をば、自分でも知らずにいるに違いない」
「貴様は何でも勧め上手じゃケニ一つ行《い》て教
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