お話で、今にも凍え死にそうな色になって『寒い寒い』と云いますので、タッタ一枚着ておりました私の褞袍《どてら》を上から引っ被《かぶ》せて、紅褌《あかべこ》一貫で先に立って、霜柱だらけの山蔭をお寺の方へ行きますと、暫く行く中《うち》に、大惣は元来の大男で、ツン州の力が足らぬと見えて、十文字に縛った帯が太股《ももどう》に喰い込んで痛いと大惣が云い出しました。
私はトウトウ腹が立ってしまいました。裸体《はだか》のままガタガタ震えながら大惣を呶鳴《がみ》付けました。
『太平楽|吐《こ》くな。ええ。このケダモノが……何かあ。貴様が死《しに》さえすれあ二十円取れる。市役所へ五十銭附けて届けれあ葬式は片付く。アトは丸山に行《い》て貴様の狃除《なじみ》をば喜ばしょうと思う居《と》る処《と》に、要らん事に全快《よう》なったりして俺達をば非道《ひど》い眼に合わせる。捕らぬ狸の皮算用。夜中三天のコッケコーコーたあ貴様《ぬし》が事タイ。それでも友達甲斐に連れて来てやれあ、ヤレ寒いとか、太股《ももどう》の痛いとか、太平楽ばっかり祈り上げ奉る。この石垣の下に捨てて行くぞ……エエこの胆泥棒《きもぬすと》……』
『ウ
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