。寝とれ寝とれ。サア飲め。ウント飲め。末期の水の代りに腹一パイ飲め……』
 そんな状態《わけ》で、病人と介抱人が日本一の神様みたようになってグーグー眠ってしまいましたが、その中に大惣の声で……、
『オイオイ。湊屋。起きんか。モウ正午《ひる》過ぎぞ』
 と云うて私を揺り起しますので、ビックリして跳ね起きますと……ナント……大惣が起きて、私どもの枕元に座っております。神霊《ごしん》の上がったようなポカンとした顔《つら》をしております。
『ウワア。貴様……起きとるとや』
『ウン。気持《きしょく》のええけに起きてみた』
『何や。……全快《なお》ったとや』
『ウン。今、小便に行《い》て来たが、ちいっとばっかしフラフラするダケじゃ。全快《ような》ったらしい』
『ウワア……それは大変事《おおごと》の出来《でけ》とる。いま全快《ような》っちゃイカン』
『イカンち云うたてチャ俺が困る』
『コッチも困るじゃないか。貴様の生胆《きも》の手附の金をばモウ崩いてしもうとる』
『何でもええ。貴様に任せる。生胆《きも》の要るなら遣る』
『馬鹿……今、貴様の生胆《きも》を取れあ、俺が懲役に行くだけじゃないか……おいツ
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