くさん》ペケある。二十五円二十五円。アンタは帰れ。モウ話しせん』
私は支那人の足下を見てしまいました。魚市場の伜だすけに物は云わせません。支那人《チャンチャン》坊主は未練そうに立上りかけました。
『そんなら十七円五十銭……ぬくい中《うち》……』
『ウーム……』
と私は腕を組んで考えました。ここいらが支那人《チャンチャン》の本音かなと思うておりますところへ、横から大惣が蒼白い手を伸べて私の着物の袖を引っぱりました。
『……ヤスイヤスイ……ウルナウルナ……』
『わたし。最早《もう》帰ります。十八円……いけませんか』
『ペケ……ペケ……オレノ……キモハ……フトイゾ……ペケペケ……』
『ええ。要らん事云うな。大惣……黙って呻吟《うめ》きよれ』
『ウンウン。ウンウン。水ヲクレイ』
『ホラ。遣るぞ。末期《まつご》の水ぞ。唐人さんドウかいな。もう死によるが。早よう話をばきめんとほかの処へ持って行くがナ』
とうとう支那人が負けて二十円で手を打ちまして、ほかの処へ持って行かぬように、五円の手附を置いて帰りました。
『ヤレヤレ。クタビレタ』
『ウンウン……ウンウン……スマンスマン……』
『モウ呻吟《
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