すこし出来る支那人《チャンチャン》を引っぱって木賃宿へ帰って来ました。
その支那人《チャンチャン》は体温計《ねつはかり》と聴診器《みみラッパ》を持って来ておりました。私とツン州と二人で感心して見ております前で、約束通りにウンウン呻吟《うめ》きよる大惣の脈を取って、念入りに診察しますと病人の枕元で談判を初めました。
『この病人は明日《あした》の正午《ひる》頃までしか保《も》たん。死骸を蒲団に包んで私の家《うち》に担いで来なさい。高価《たか》く買います。私の店はこの頃開いた店じゃケニ高い。ほかの家《うち》は皆安い。死骸の片付けも皆して上げます。頭毛《かみげ》も首の骨もチャント取って上げます。生胆《きも》のほかに胃腸《いぶくろ》につながっている小さい青い袋を附けて下されば七円五十銭。それが温《ぬく》い中《うち》に持って来なされば十二円五十銭……』
支那《チャンチャン》坊主は掛値を云うものと思いましたケニ、思い切って大きく吹っかけました。
『イカンイカン。二十五円二十五円。一文も負からん。ほかの処へ持って行く。ほかに知っとる店がイクラでも在る』
『それなら十五円……』
『ペケペケ。絶対《た
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