しました。涙を一パイ溜めております。
『……イロイロ……セワニ……ナッタ……』
『ウム。そげな事あドウデモよかバッテン、イッソ死ぬなら俺へ形見ば遣らんか』
大惣は寝たまま天井をジイッと見した。
『……シネバ……シネバ……何モイラン……何デモ遣ルガ……何モナイゾ……』
『ホンナ事に呉れるか』
『……ウム。オレモ……ダイ……大惣じゃ』
『よし、それなら云おう。貴様が死んだなら済まんが、貴様の生胆《きも》ば呉れんか』
大惣が天井を見たままニンガリと物凄く笑いました。
『ウム。ヤル。臓腑《ひゃくひろ》デモ……睾丸《きんたま》デモ……ナンデモ遣ル。シネバ……イラン』
『よしっ。貰うたぞ。今……生胆《きも》の買手をば連れて来るケニ、貴様あ今にも死ぬゴトうんうん呻唸《うめ》きよれや』
大惣が今一度、物凄くニンガリしながら合点合点しました。私は直ぐに木賃宿を飛出しました。
その頃は長崎に、支那人の生胆《いきぎも》買いがよく居りました。福岡アタリの火葬場にもよくウロウロしおりましたそうで……真夜中でも何でも六神丸の看板を見当てにしてタタキ起しますと、大抵手真似で話が通じましたもので、私は日本語の
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