もうた。その二十三か四の年の暮が仙崖さんの絵の通り『サルの年祝うた』になってしもうた。
 借金で首がまわらぬと申しますが、あの味わいバッカリは借金した者でないと理解《わか》りまっせん。博多の町中、行く先々、右も左も虱《しらみ》の卵生み付けたゴト不義理な借銭ばっかり。真正面の青天井に見当を附けて兵隊《ちんだい》さん式にオチニオチニと歩まぬと、虱の卵を生み附けられた顔がイクラでも眼に付きます。その虱の卵が一つ一つに孵化《われ》て、利が利を生みよる事を考えると、トテモ博多の町に居られた沙汰では御座いませぬ。こげな事にかけますと私はドウモ気の小さい方と見えまして……ヘイ。
 私の女郎買とバクチの先達《せんだつ》で大和屋惣兵衛《やまとやそうべえ》、又の名を大惣《だいそう》という男が居りました。最前チョットお話ししました棺の中でお経を聞いてビックリした豪傑で、お寺の天井に居る羅漢様と生き写しの面相《つらよう》で、商売の古道具屋に座って、煙草を吸うております中《うち》に蜘蛛《くも》が間違えて巣を掛けよるのを知らずにおったという大胆者《おちつきもん》で御座います。
 平生《ふだん》から私の事をドウ考え
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