ましたが……アハハハ。
魚市場の商売ナンテいうものは学問があっちゃ出来まっせん。早よう云うてみたなら詐欺《インチキ》と盗人《ぬすと》の混血児《あいのこ》だすなあ。商売の中でも一番商売らしい商売かも知れませんが……。
第一、生魚《しなもの》をば持って来る漁師が、漁獲高《とれだか》を数えて持って来る者は一人も居りまっせん。沖で引っかかった鯖《さば》なら鯖、小鯛《こだい》なら小鯛をば、穫れたら穫《と》れただけ船に積んでエッサアエッサアと市場の下へ漕ぎ付けます。アトは見張りの若い者か何か一人残って、櫓櫂《ろかい》を引上げてそこいらの縄暖簾《なわのれん》に飲みげに行きます。
その舟の中の魚を数え上げるのは市場の若い者で、両手で五匹ぐらいずつ一掴みにして……ええ。シトシトシト。フタフタ。ミスミス。ヨスヨスヨスと云いおる中《うち》に、三匹か五匹ぐらいはチャンと余計に数えております。永年数え慣れておりますケン十人見張っておりましても同じ事で、〆《しめ》て千とか一万とかになった時には、二割から三割ぐらい余分に取込んでおります。
そいつを私が糶台《ばんだい》に並べて、
『うわアリャリャリャ。拳々《
前へ
次へ
全180ページ中108ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング