「イエス様と彦九郎を一所《いっしょ》にしちゃ耶蘇《やそ》教信者が憤《おこ》りやしませんか」
「ナアニ。ソレ位のところじゃよ。彦九郎ぐらいの気概を持った奴が、猶太《ユダヤ》のような下等な国に生れれば基督《キリスト》以上に高潔な修業が出来るかも知れん。日本は国体が立派じゃけに、よほど豪い奴でないと光らん」
「そんなもんですかねえ」
「そうとも……日本の基督教は皆間違うとる。どんな宗教でも日本の国体に捲込まれると去勢されるらしい。愛とか何とか云うて睾丸《きんたま》の無いような奴が大勢寄集まって、涙をボロボロこぼしおるが、本家の耶蘇はチャンと睾丸《きんたま》を持っておった。猶太でも羅馬《ロウマ》でも屁とも思わぬ爆弾演説を平気で遣《やり》つづけて来たのじゃから恐らく世界一、喧嘩腰の強い男じゃろう。日本の耶蘇教信者は殴られても泣笑いをしてペコペコしている。まるで宿引きか男めかけのような奴ばっかりじゃ。耶蘇教は日本まで渡って来るうちに印度《インド》洋かどこかで睾丸《きんたま》を落いて来たらしいな」
「アハハハハ。基督の十字架像に大きな睾丸《きんたま》を書添えておく必要がありますな」
「その通りじゃ
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