オホホホホホ。可笑しいでしょう。妾はチャンと知っているけど知らん顔をしているの。でも時々可笑しくて仕様がなくなるのよ。
あんな禿頭の人と結婚するのかと思ってね。ホホホホホホ。ハハハハハハ……。
[#改ページ]
崑崙茶《こんろんちゃ》
婦長さん……看護婦長さん。チョットお願いがあるんです。ちょっと来て下さい。大至急のお願いが……。
あのね……耳を貸して下さい。済みませんが……。
……僕の不眠症の原因がわかったんです。ここへ入院してからというもの、どうしても眠れなかった原因が……。
僕は飛んでもない呪詛《のろい》にかかっているのです。イイエ。虚構《うそ》じゃありません。卒業論文なんかに呪詛《のろ》われて、神経衰弱にかかったんじゃありません。別にチャンとした原因があるのです。事実の証拠が眼の前に在るのです。
僕はね……ビックリしちゃいけませんよ。僕はね。すぐ横のベッドに寝ている支那の留学生ね。アイツに呪詛われているのですよ。あいつに呪詛われて殺されかけているのです。ですからこの室《へや》に居たら到底助かりっこないのです。
エッ……どの支那人かって……? ……ホラ…
前へ
次へ
全30ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング