それからアアとサアのお妃《きさき》の父親の王様も死んでしまって、アアもサアも立派な鬚を生《は》やした王様になっておりました。
一番兄さんのアア王は今一本の手紙を書いて、弟のサア王の国へお使いに持たせてやっております。
その手紙にはこんなことが書いてありました。
「おれとお前とはこの国を半分|宛《ずつ》持っている。しかしおれはお前の兄さんだから、お前はおれの家来になって、お前の国をおれによこしてもいいと思う。そうすればお前はおれの一番いい家来にしてやる。けれどももしお前がイヤだと云うのなら、おれは何にでもあたる鉄砲を持っているから、ここからお前を狙って打ち殺してしまうぞ」
この手紙を見た弟のサアは大層|怒《おこ》りました。
「いくら兄さんでも、半分|宛《ずつ》わけて貰ったこの国を取り上げるようなことを云うのは乱暴だ。そんな兄さんの云うことは聴かなくてもよい。鉄の鎧を着ていればいくら鉄砲だってこわいことはない。今から兄さんと戦争をしてやろう」
と、すぐに家来に戦《いくさ》の用意をさせました。
このことをきいた兄さんのアア王は大層|憤《おこ》りまして、
「おのれ、サア王の憎い奴め。
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