ました。そのあとからサアが刀を抜いて、攻めて来る敵を片っぱしから刀も鎧《よろい》も一打《ひとうち》に切って切って切りまくりましたので、敵は大|敗《ま》けに敗《ま》けて逃げてしまいました。
 その御褒美で、アアは王様の国を半分と一番目のお姫様を、サアはまた残りの半分と二番目のお姫様を貰って、二人共王様になり、お父様とお母様を半月|宛《ずつ》両方へ呼んで、大威張りをしているところまで見えました。
 リイはあんまり早くいろんなことがはじまって行くので眼がまわるように思いましたが、それでもこの様子を見て安心をしまして遠眼鏡を眼から離しますと、最前から傍《かたわら》で見ていた月姫はニッコリしながら、
「人間の世界を御覧になりましたか」
 と尋ねました。リイはだまってうなずきますと、月姫様はやはり笑いながら、
「あんまりいろんな事が早くかわって行くのでビックリなさったでしょう」
「ハイ。夜が明けたかと思うともう日が暮れます。そうして暗くなったと思うともう夜が明けています。あれはどうしたわけでしょう」
 とリイは眼をまん丸にして尋ねました。
「それはこういうわけで御座います」
 と月姫様は云いました
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