って下さいまし」
と云ううちに、リイの手を取って月姫は御殿の中に連れて行って、いろんな御馳走をリイの前に並べました。
けれどもリイはその御馳走をたべようとはしませんでした。お父様やお母様や兄様たちにだまっておうちを出て月の世界に来たのですから、リイは心配で心配でたまらなくなりました。そうして又もや遠眼鏡を眼に当て、向うの水晶の山の上に見える人間の世界をのぞいて、息をつめて、
「アム」
と云いました。
そうすると又不思議です。
一番初めに見えたのは、自分のうちに一番兄さんのアアと二番目の兄さんのサアが寝ている枕元に最前の魔法使いのお婆さんがあらわれて、アアには何にでもあたる鉄砲をやり、サアには何でも斬れる刀をやっているところです。
二人の兄さんは望み通りのものを貰ったので、すぐ起き上って外へ飛び出して、王様のお城に行きまして、王様に家来にしてくれと頼みました。
王様は、二人の持っている不思議な宝物《ほうもつ》を見てたいそう感心をして、すぐに家来にしましたが、間もなく隣の国と戦争がはじまりますと、アアとサアは一番に飛び出して、アアは山の向うにいる敵の大将をたった一発で打ち倒し
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