ろう
もしも降らせぬそのときは
嘘つきぼうずと名を書いて
猫のオモチャにしてしまう
それがいやなら明日《あした》から
ドッサリ雨をふらせろよ
褒美にお酒をかけてやる
雨ふり坊主フリ坊主
田圃もお池も一パイに
ドッサリ雨をふらせろよ」
太郎はその手紙を丸めて坊主の頭にして、紙の着物を着せて、裏木戸の萩の枝に結びつけておきました。
その晩、太郎の家《うち》で親子三人が寝ていると、夜中から稲妻がピカピカ光って雷が鳴り出したと思うと、たちまち天が引っくり返ったと思うくらいの大雨がふり出しました。
「ヤア、僕の雨ふり坊主が本当に雨をふらした」
と太郎は飛び起きました。
「僕はお礼を云って来よう」
と出かけようとすると、お父さんとお母さんが、
「あぶない、あぶない。今出ると雷が鳴っているよ。ゆっくり寝て、明日《あす》の朝よくお礼を云いなさい」
と止められましたので、太郎はしかたなしに又寝てしまいました。
あくる朝早く起きて見ると、もうすっかりいいお天気になっていましたが、池も田も水が一パイで皆大喜びをしていると、田を見まわりに行っていたお父さんはニコニコして帰っ
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