ました。
たとえ、ま昼に幽霊に出会いましたとても、私は、あの時ほどに慄《ふ》るえわななきは致しませんでしょう。……その頁にやはり大きく七分身におうつりになっている貴方様のお洋服姿を拝見致しました時に、お母様の変装かと思うほどよく肖《に》ておいで遊ばすことが、ただ一眼でわかってしまったので御座いました。その時に私は畳の上に両手をついて、あなた様のお写真を見入ったまま……不思議の上にも重なる不思議に、すっかりおびやかされてしまったので御座いました。そうして何もかもがわからなくなりましたまま、今にも気絶しそうに息苦しく喘《あえ》ぎつづけていたように思います。しまいには両方の手首が痺《しび》れて来まして、髪の毛が顔の前に乱れかかって参りましてもやはり身動きすら出来ないままに次から次へと恐ろしい思いに迷いつづけていたように思います。
「私は不義を致したおぼえは毛頭御座いません」
と仰有ったお母様のお言葉をハッキリと思い出しながら……。
けれども、そのうちに室《へや》の中が真暗《まっくら》になってしまったのに気がつきますと、私はやっと気を取り直しました。机の端に置きました小《こ》ラムプに火を
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