、近頃のお方のお名前は一人も存じませんでした。まして中村珊玉様に男のお子さんがおありになる事だの、それが私とおない年でおいでになる貴方様で、中村半次郎様と仰有る事なぞ夢にも存じませんでしたので、そうと知りますと、もう不思議なおなつかしさが一パイになりまして、まだ表紙を開きませぬうちから顔が熱《あ》つくなるように思いました。
 申すまでもなく、あなた様と、お父様の、お素顔の写真を拝見致しましたのはその時が初めてで御座いました。そうして、まことに失礼では御座いますけれど、最初に大きく出ておりました貴方様のお父様の、十徳を召したお顔をジイと見上げておりますうちに、柴忠さんの処のお湯殿の鏡の中で見ておりました私の顔が、マザマザと浮き出して参りました時の私の胸の轟きはどんなで御座いましたでしょう。今更に不思議なような、恐ろしいような……そうしてたまらなくおなつかしいような……それでもそう思ってはならぬと……いうような何ともいえませぬ思いにわななきながら、いつまでそのお写真を見入っておりましたことでしょうか。
 けれども、そうした私の思いは、その次の頁《ページ》を開きますと一緒にかき消されてしまい
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